100629:0659

時間が許す限り、色んな記憶を遡っているせいで、ここのところ現実感が希薄。僕個人の境界線みたいなものが掴みとりづらい。なぜかと言えば、そもそも振り返っているのが僕の記憶ではないからである。

映画でも音楽でも、ある作品に感情移入できるか否かの分水嶺は、その内に自身の一部を見いだせるか否かだと思う。たとえばボスニア・ヘルツェゴビナで四代にわたり靴屋を営む老夫婦が、大切に育てていた三羽のガチョウが謎の死を遂げた事を嘆き、あえて交通手段をヨットに限定したうえで、滋賀県に住む新人霊媒師を尋ねる旅行記、みたいな映画はヒットしないのだ。僕は間違いなく二回観に行くけど。

様々な人間がいて、僕がいる。老いた靴屋がいて、新人霊媒師がいる。僕たちは考えなければいけない。本当にその鳥はガチョウだったのだろうか、と。


100628:0650

6月中に起こそうと思っていた行動を、この土日に起こせず。ふざけきる自信がない時にふざけると、悲惨な結末を導いてしまう。あと2日の間にきっかけを得る事ができればいいと考えなおす。僕は今、怒っているわけでも悲しんでいるわけでもなく、ましてや無力感に苛まれているわけでもない。あえて言語で表現するならばそう、必死に言い訳を考えている。

こういったわけのわからない気分の朝には、白いカーテンを開けて、動きのない曇り空を眺めながらWilcoを聞こう。


100627:0718

黒板にはじめて割り算の筆算を見た時、「便利だな」とか「考えた人はすごいな」とかの前に、ただ「へんな形だな」と思った。式を解くにつれて右下を頂点とした下向きの三角形ができあがるんだけど、日常生活の中で、右下からいびつに伸びていく三角形というのはあんまり見かけないように思えた。

コンピュータにとって、割り算は他の四則演算に比べコストが高い。だから真剣にパフォーマンスを追求するなら、負荷のかからない違った形(逆数の掛け算)で代用するのだけど、これもきっと、コンピュータのような美しい思考が、右下がずるずると伸びていく不安な形状を嫌っているからなのだ。もっと単純に、割り算に自信がないのかもしれないけれど。


100626:0741

気の利いた女性からは、「あなたの躰がスウェーデンだとしたら、あなたの頭の中はまるでストックホルムね」と評価されるほど、使い道のないアイデアがストックされている僕の記憶領域。動画は、約五年前に考えた「ザ・ミュータント・カーソルズ」というセキュリティ・ソフトウェア。虫が苦手なクラッカーは画面を正視できずに目を背けるであろうと考えたのだけど、当然、最初に発想したのは駄洒落の方である。

さっき暇だったので作ってみたのだけど、ライフゲームのように、各個体に淘汰やコロニー生成の考え方を取り入れると面白そう。見るに耐えないのでこれ以上作らないですけど。


100625:2250

23時近くになってまだ起きているのは、活字に妙にリアリティのある、色々と考えさせられる一日だったからだ。鞄の中には相変わらず角張った世界史の本が入っていて(人類の祖先がオーストラリアに移住を終えたところまで読んだ)、iPhoneの中には声も知らない誰かの個人史が入っている(2003年の秋のはじまりまで読んだ)。

もし僕がセリヌンティウスなら、地平の太陽が、その最後の弧を大地の向こうに沈めようとする夕闇の中、「……構わない。俺を殴ってくれ」と言いながら、キスをせがむ表情を見せてメロスを失笑させたかもしれない。そしてやはり力いっぱい殴られたかもしれない。

要するに、僕たちは、目の前に選択肢があらわれるたびに足を止め、戸惑い、恐れ、これまでの歩みを振り返り、その先にある暴力を予感する。


100625:0717

4時過ぎに起床。ネッシーとドーナッツについての思索を深く追っている間に、サッカーの試合が終わっていた。僕が応援しなかっただけあって日本の勝利である。おめでとう、給料日。先程の両者についてひとつはっきりとしたのは(←ちゃんと考えていた)、ネッシーとドーナッツには案外共通点が多いということ。促音と長音が同じだし、シとツも字体が似ている。夕暮れ時、豆腐屋の向こうにシとツが立っていたら、どちらの影かわからないかもしれない。

などと無意味なことを書いていたら、ツの一文字だけでも顔文字に見えてきた。ツッッツ


100624:0535

携帯電話のパスコード・ロックってわずらわしいなぁと以前から思っている。だけれども、僕以外の人間も含めた個人情報のカタマリを、無防備に扱うわけにもいかない。そこで、ロック画面の壁紙をこういう感じにしておけば、時間かせぎ位にはなるのではなかろうか。もちろんフェイクなんだけど。

うまくいけば、駅前でiPhone片手にぶつぶつ呟いている怪しげな人間を見つけられるかもしれない。また、フレーズを哀愁ただようメッセージにしておく事で、怪しげな彼も幼き頃を思い出し、素直に警察に届け出る気になるかもしれないし、ならないかもしれない。結論として、僕たちはiPhoneを紛失しないように普段から気をつければいいと思う。


100622:0719

相変わらず朝食には納豆ご飯を食べている。べつに毎朝、奥様に対して優越感を得たいというわけでもない。高校生くらいまで、納豆などというものは生者の口にするものではないと本気で思っていたけれど、今では生死に関係なく納豆に囲まれていたいと感じる。

この先、もし僕が志半ばで倒れた折には、「千の風になって」をBGMに、棺には目一杯の納豆を入れてよくかき混ぜて欲しい。約4分で蘇る自信がある。


100621:0537

午前3時半に目覚める。ふと思い立ってAperture 3の体験版をダウンロードしてみたけれど、僕の使っているコンピュータには荷が重かった。外部ディスプレイを使っている事も関係しているのかもしれないけれど、やめておこう。食パンを探したけれど見つからず、小さなシュークリームを食べた。

ついでに昔の写真を見返していたら、僕は、ズームレンズを使っている時の方がより変なものを撮る頻度が高いという事に気づいた。視野が人間離れしている状態が続くと、はやくにんげんになりたい感が増幅されるのかもしれない。とはいえ、あなたのその妖怪写真家を見る目はやめて欲しい。はやくしょくぱんがたべたい。


100620:0724

土曜日。午前中に杉尾君から電話があった。届けものがあるので家に寄ります、との事。先日、新築のお祝いをしたお返しだそうである。僕が新築祝いを頂いた時には、そういうのを返した覚えがないけれど、微笑を浮かべて黙っていた。

10時過ぎに訪れた彼と、玄関先で話をした。本当の彼を知らない子供たちは、以前からとても懐いている。杉尾君と僕の奥様との間で車の話で盛り上がっていたけれど(杉尾君が車を買ったのだ)、僕にはさっぱりわからない。「エルグランドには手が届かないよねー」とか言っているのを聞いて、僕はしばらくエルドラドを思い浮かべた。確かに簡単には手が届かない。

彼の車が大きくて乗り心地が良いと聞いて、ドライブしようという話になった。というか僕がリクエストした。三時間ほどで三田まで往復。僕が餃子の王将(エルドラド)で昼食をおごり、彼がデザートとガソリンをおごった。


100619:0607

あまりにも一般的な歴史の成り立ちに関する知識が欠如している事に気づいたので、「世界の歴史」という本を買った。レイアウトも文体も構成も、とてもわかりやすい。とてもわかりやすいけれど、2,500円の本を10巻まで揃えることを考えると、わりと怖い。わりと怖いけれどとてもわかりやすい。


100616:0641

4時20分に起床。昨晩、就寝前に起動しておいたウイルスチェックが、開始2分で静止していた。MacBook Proの電源ケーブルが抜けていたのだ。思わず外人のように大げさに肩をすくめ、「まいったな……」と声に出してみたけれど、実際の所、それほどまいっちんぐしていない。なぜ文章の末尾で無理な遊び心を加えたのかも説明できない。

Mac miniが新しくなった。小さい頃から一緒に悪戯ばかりしていた従兄弟が、いつしか進学校に進んでいたような寂しさを覚える。


100615:0635

いよいよワールドカップ、待ちに待った日本-カメルーン戦という事で、20時半に眠って4時過ぎに起きた。夜明けの予感をたたえた薄白んだ空の下で、目が覚めた時にはすべてが終わっていた。淡々といくつかのニュース記事に目を通し、コーヒーを片手に、僕が日本代表に選ばれなかった理由をもう一度考えなおしてみた。おそらく、これまでに僕がサッカーをやってこなかった事が最大の要因と考えられる。

二階の幾つかの窓を開け、ポテトチップスを食べつつ、ハードディスクの整理をした。待ち時間には玄関から外へ出て、冷えきった気持ちの良い空気を吸った。明け方の空気はやけに新鮮に思える。僕がキタキツネであれば木の実でも探しに出かけようかという気分だけど、残念ながら僕はキタキツネではなく、木の実にも木の実ナナにもさほど興味はない。さらに言えばまともにサッカーさえやった事がない。様々な物事の成り立ちが少し理解できたので、ドアを閉めてコンピュータの前に戻った。


100613:1656

昨日、奥様の父上を拝見したとき、肩から下げられたカメラの数字が不思議と目にとまった。いつもより400ほど増えているような気がする。

「……父上、そのカメラはD300とは少し違って見えるのですが」と尋ねてみると、「うん、D700」と淡白な返事があった。淡白でありながら、迷いがない。
「……買ったんですか? D700を? FXマウントですよ?」と続けて問えば、「だって、レンズ込みでもだいぶん安くなってきてたし。最初は40万弱くらいしたもんなぁ」と、説明にならない言い訳を無邪気な笑顔で述べられた。
 「……あのー、念のために確認しておきますが、母上はこの事を?」と最後に念押ししておくと、父上の顔からは一切の表情が消え、冬の月のように押し黙られた。宇宙のはじまりには無があったと聞く。


100613:0501

例のゴキブリは居なくなりました(←はっきりと名前で呼んだ!)。

Safari 5とFlashPlayer 10.1で、(恐らくFlashを埋め込んだ)ウインドウを閉じるたびにWebKitのエラーが表示されるようになってしまった。似たような症状を検索してみたものの、これといって情報が得られなかったので、Flashのバージョンをひとつ戻す事にした。今のところ再現していない。

iPhoneにガチャコンがリリースされた。僕がよちよち歩きでMac用ソフトウェアをつくり始めた頃から、「……まぁ、なんとなくこっちの方向に行ってもいいんじゃないの? たぶん」というゆるやかな方向性を照らして下さっていた、敬愛するSTUDIO-蔵さんの作品。いつものようにクオリティは高く、400メートル・リレーのアンカーが堂々と原付にまたがってバトンを待っている位の安定感がある。世界観をデザインできる人々は強い。


100611:0417

もう全てを忘れたつもりでいた。その温もりも、足音も、細やかな指の動きも。僕はもう再会を望んでなどいないはずだった。少なくともそう信じていた。これ以上を顔を合わせる事はない、そう望んでいたはずだった。

けれども……。昨夜、気がつけば君はいた。君の頬は手を伸ばせば届くところにあった。君はあの時と変わらない表情で、じっと僕を見つめていたね。頭の中が真っ白になり、僕は言葉を探した。それと同時にゴキジェットプロを探した。けれど見当たらないんだ。見当たらないんだよ。


100609:2059

残業さえなければ22時までに眠り、4時台に起きだして活動を始める、というペースが板についてきた。
 もちろん、突発的な仕事が発生して帰宅が日付を回ることもあるけれど、元々が夜行性の人間なので布団に入るのが遅れる点については鈍感で居られる。それよりも、毎朝、手付かずの静寂な二時間が確保されている意味は大きい。

「夕焼けに心揺さぶられる前に日の出を思え」というのは、僕が大切にしている七つの言葉のうちひとつである。残りの六つはいずれ思いついた機会にもっともらしく述べるとして、そんな機会を期待する前に日の出を思え、と今日は改めて強い口調で言っておく。僕の知る限り、世の中にある大抵の格言は、勢いと決めつけでその骨格を築いている。


100608:0610

職場におられる、退社時刻10分前の午後5時50分に用件を思いつく事の多い方が、本日も午後5時50分に「ちょっと調べて欲しいんだけど」とおっしゃった。先週の金曜日に休ませてもらった僕なので、文句を言うわけもない。「はいはい」と二つ返事をしたところから、21時に椅子の上で白目になっていた辺りまでの記憶がない。

帰宅すると、昨日から引き続き娘が熱で弱っていた。それでもなにか冗談を言えば笑うので、おそらく僕のユーモアセンスが下々の人間と比較して頭ひとつ飛び抜けているか、もしくは彼女が人一倍気遣いのある性格なのだろう。何度か冷たいお茶を飲ませて、気がついたら時刻は午前2時。「これはまずいですよ」と、苦しい心境をまさかの長嶋茂雄名誉監督のモノマネで逃げておいて、どうにか2時間ほど眠った。眠いですよ。


100607:0635

21時前後に眠り、25時半に目覚めた。これからの一週間を思うとこれではリズムが早過ぎると思い、もう一度布団で横になったのだけどうまく寝付けない。仕方がないので2階へ移動して、昨日の夕方にかけた3枚のシャツのアイロンの出来を確認した。大きなミスがない事はわかっているけれど、時々、自分の技術レベルを確認するための時間を設けるのは大切な事だ。

ここ数日間、Google Chromeを使っている。2バイト文字を入力する時に、入力しはじめの最初の1文字目が認識されない不具合があるようで、少しストレスを感じる。僕の使い方だと、その他には特筆すべき所はない。良くも悪くも、「あー、なるほど、Picasaを作っている会社の製品だなー」と、やたら長音を含んだ感想を覚える。洗練されているのに妙に野暮ったい。


100606:0737

肩と背中の痛みはだいぶ和らいできた。どうにかインターハイを勝ち残る程度であれば見込みがついたと思う。ただ、やはり一本背負いのように上半身の負荷が高い大技は見合わせていく必要があるし、なぜ急に柔道選手目線になっているのかも、いずれ時間をとってきっちりと国民の皆さんに説明しなければならない。途中でこっそり幹事長目線にすり替わった。

昨日は奥様の友人が来宅され、夕方まで子供たちも楽しんだ様子だったのだけど、娘は気持ちの高ぶった状態が続くと熱を出しやすく、夕方から朝まで眠り続けた。「体温調節が苦手なのよ」と奥様は言う。人間には様々な得手不得手がある。ちなみに僕は、皆が意味不明に元気になる柔道の授業が全般的に苦手だったよ。


100605:1429


100605:0531

数日前から、朝起きると背中の上の辺りが痛くて起き上がるのに苦労する状態が続いていた。昨日はそれが限界に達し、左手も痺れていたので、病院へ行って診察を受けることにした。

近くの神経外科を訪れると、午前8時35分の段階で待合室にはご年配の方々の波。ベンチは全て埋まっていて、数えてみると19人居らっしゃった。ひょっとしたら一昨年くらいからずっと座っておられるのかもしれない。

大きな水槽があったので眺めていると、ちょうど2時間後に声をかけられ、MRIとレントゲン。結果を待って午後1時半くらいに話を聞いた。頚椎の上から6番目と7番目の骨が神経の通り道を圧迫しているらしく、突発的に激痛が走る事があるらしい。「……正直に言って下さい。助かる見込みは何パーセントですか」と尋ねようとしたら、「姿勢がね、悪いんじゃないの、姿勢。ほらここ骨歪んでるやん。とりあえず経過見ようや」と言われた。えー! Dr.フランク!

というわけで、昨日から僕は、仕事前の中世の死刑執行人のようにしゃっきりと首を立てています。

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