なにも考えられなくなるくらい眠いのは、さっぱり眠れなくなるくらい考えこんでしまうのと同じくらいつらい。夜の海がただ煌々と月を映すように、年末調整の提出期限だけが静かに忍び寄る世界。私たちはどこから来てどこへ行くのかという命題よりも切実に、私はいったい何時に寝て何時に起きるのかと考えこんでいると、予想していた通りやっぱり眠れない。

「睡眠は覚醒の対局としてではなく、その一部として存在している」と言い終える前に膝先から崩れ落ちそうなほど眠い。

 駅前を歩いていたら、旅行者と思しき若い男女が、手にしたスマートフォンの画面を僕の顔に向けて近づいてきた。非常にまずい、と思ったけれど、逃げるのも不自然かとその場に留まっていると、十秒ほどの後、有楽町の夕景には「中国系の男女に早口の英語で道を尋ねられ、豁然と日本語で返事をする男」というアートが完成していた。

 なぜ僕が東京にいるのか、その理由を詳らかに説明するには、あらためて大政奉還辺りからこの国の歴史を紐解かなければならないのでここでは割愛するとして、とにかく慣れない住居に足を踏み入れてから一週間が過ぎた。とはいえ、この一週間のなかに自由な時間がどれほど確保できていたかを考えると、体感としてはまだこの街にきて一日半ほどしか経っていない気もする。

 不意にテレビをつけてみれば見覚えのない番組が目白押しだけれど、そもそもきっちりと時間を用意して正式にテレビを見るのが久しぶりなので、その見慣れなさの要因にどれほどの地域性が関与しているのかがわからない。池田貴史さんが真ん中に座って、なんか辛いカレーを食べている深夜番組が面白かった。

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